ヘアカラーは何色が好まれるのか?欧米の研究から③ ステレオタイプと髪色

様々なヘアカラー・髪質

ヘアカラーは何色が好まれやすいのか?魅力を上げるヘアカラーは何色なのか?

日本人をはじめアジア人やアフリカ人の地毛はほとんどが黒髪やこげ茶ですが、ヨーロッパ人(白人・コーカソイド)は、ブロンド(金髪)、レッド(赤毛)、ブルーネット(栗毛)、ダークブラウンからブラック(黒髪)まで、地毛の色も多種多様。
そんな白人の多いヨーロッパやアメリカでは、何色の髪が好まれやすいのかという研究が行われています。

前々回は援助行動を受けやすい髪色について、前回は職務能力を評価されやすい髪色についてご紹介しました。
今回ご紹介するのは、髪色のステレオタイプについて。
「ステレオタイプ」とはWikipediaによると「特定のカテゴリーの人々に関する過度に一般化された信念」のこと。
具体的には、女性はすぐ泣くとか、九州人はお酒が強いとか、美容師にはサーファーが多いとか・・・・・・こういった性別・人種・職業・学歴・出身地などで「こういうカテゴリーに属する人たちはこうだ」という先入観や思い込みのことを言います。
今回ご紹介するのは、髪色のステレオタイプについて。

ブロンドとレッドのステレオタイプは…?

前回も取り上げたTakeda, Helms & Romanova(2006)の論文では、それまでに行われてきた髪色とステレオタイプについての研究を引用し、ブロンドは無能だが好感が持て、レッドは能力があるが好感が持てない、と述べています。
それでは、具体的にどのような研究が行われてきたのでしょうか?

Clayson & Maughan(1986)は大学生100人への調査を行いました。その結果は以下の通りだったそうです。
ブロンドの女性…美しく、感じが良く、とても女性的
ブロンドの男性…強く、活動的で、感じが良く、成功し、ルックスが良い
レッドの女性…魅力的ではない、有能、プロフェッショナル
レッドの男性…魅力的ではない、成功していない、男らしくない
彼らは、赤毛はまれな存在であるため、否定的にステレオタイプ化されるのだろうと述べています。

Weir & Fine-Davis(1989)は、ヨーロッパでよく言われる”dumb blonde”(頭の悪いブロンドの意味)と”temperamental redhead“(気難しい赤毛の意味)のステレオタイプが存在するか調査を行いました。
その結果”dumb blonde”のステレオタイプは男性のみに存在し女性には存在しないこと、”temperamental redhead”のステレオタイプは男女ともに存在するとを突き止めました。

赤毛への嫌悪感

Feinman & Gill(1978)は、各500人前後の男女を対象として、異性の目の色、髪の色、肌の色の好みを調査しました。
その結果、目の色・髪の色・肌の色いずれも男性は明るい色の女性を、女性は暗い色の男性を好む傾向があり、また赤毛は80%以上の人が嫌いと答えていました。

Heckert & Best(1997)は、赤毛の人たちにインタビューを行っています。
彼らが認識しているステレオタイプは、短気、道化師、変わっている人、アイルランド人、太陽の下にいられない、ワイルドな女性、弱々しい男性、知的といったものでした。
赤毛の人達は、自尊心が低くなり、人とは違うという感覚、好奇の目にさらされるようなネガティブな経験をしますが、自分の持って生まれた髪の色に感謝し、ステレオタイプがどのように自己意識を形成したか見つめることでポジティブな経験に変容させていくようです。

まとめ

ステレオタイプはほとんどの場合、少数派のカテゴリーに対して形成されることが多いようです。ですから、ブロンドやレッドなど、欧米でも少数派の髪色でステレオタイプがこのように形成されてしまうんですね。多数派であるブルーネット(栗毛)に対してはほとんどステレオタイプは存在しないようです。

日本人でも金髪美人という言葉があるように、金髪の欧米人への憧れはあるのかも知れませんが、金髪の日本人に対しては美しいとか感じが良いなどというステレオタイプがあるようには思えません。同様に赤毛が有能だとも感じないかも知れません。欧米と日本人とでは地毛の色が違いますから、ステレオタイプも違ってくるかも知れませんね。

 

参考文献

  • Takeda, M. B., Helms, M. M., Romanova, N. (2006). Hair Color Stereotyping and CEO Selection in the United Kingdom. Journal of Human Behavior in the Social Environment, 13, 85-99.
  • Clayson, D. E., and Maughan, M. R. C. (1986). Redheads and blondes: Stereotypic images. Psychological Reports, 59, 811-816.
  • Feinman, S. U., and Gill, G. W. (1978). Sex differences in physical attractiveness preferences. Journal of Social Psychology, 105(1), June, 43-52.
  • Heckert, D. M., and Best, A. (1997). Ugly duckling to swan: Labeling theory and the stigmatization of red hair. Symbolic Interaction, 20(4), 365-384.

文責

中川登紀子
※この内容は英語で発表された文献から得た情報を含んでいます。日本語と英語のニュアンスが異なる可能性もありますので、詳細は参考文献等をご確認下さい。