女性にとって化粧はとても身近なもの。毎朝の習慣となっている人も多いはず。
でもふと考えたことはありませんか?何のために化粧をしているのだろう…と。
化粧をしなくても死ぬことはありません。
食べなければ死んでしまいますが、化粧をしなくても生きていくことはできます。
それでも多くの女性たちは毎日のように化粧をしています。
なぜなのでしょうか?
化粧行動の社会心理学(北大路書房)や化粧心理学(フレグランスジャーナル社)では「隠す」化粧と「見せる」化粧があるとされています。「隠す」化粧とはシミやそばかすをファンデーションで隠すというように、欠点を目立たなくするための化粧で、主にマイナスをゼロに戻す化粧行動を指します。「見せる」化粧とはアイライナーやアイシャドウ、マスカラなどで目をはっきり大きく見せるように、主にゼロをプラスにする為の化粧行動を指します。
飛田(1996)は化粧をする理由として、異性(同性)から注目されたい、きれいになりたいといった「自己顕示と魅力性」、積極的になれる、自信をもって外を歩ける、ストレス解消になるなどの「積極性や自信の獲得」、女性としての身だしなみのため、女性は美しく装うものだからといった「伝統的性役割観」,肌を守る、欠点をカバーするなどの「肌の保護と欠点のカバー」の4つの因子があることを報告しています。
ちなみに、同じ研究で化粧をしない理由についても調査しており、化粧をした時の反応が気になる、やり方が分からないといった「評価懸念」、化粧をする(落とす)のが面倒といった「心理コスト」、すぐ化粧が落ちてしまう、化粧をしない時のほうが気持ちがいいといった「効果のなさ」があるとようです。
また、平松・牛田(2004)は、大学生へ化粧への意識について調査を行った結果、化粧の意識は、自分らしい化粧をしたい、おしゃれの一部だと思うといった「魅力向上・気分高揚」、他人に見劣りしたくない、化粧のノリが悪いと一日中気分が悪いなどの「必需品・身だしなみ」、必要がない、効果がないといった「効果不安」の3つがあるとしています。
このようにして化粧をする動機を見ていくと、より魅力的に見せるため、積極的になるためといった自ら進んで化粧を行う能動的な動機と、身だしなみのため、仕事のためといった周囲から影響を受けて化粧をする受動的な動機、欠点カバーのためといった必要に迫られて行う必然的な動機の3つに集約されそうですね。
化粧をする動機はヘアカラーリングをする動機にも通じることかも知れません。
ファッショナブルに見せたいという能動的な動機でヘアカラーリングをする人もいれば、白髪を隠したいからという必然的な動機でヘアカラーリングをする人もいますよね。身だしなみのためにヘアカラーリングをするという方は少数派かも知れませんが。
逆に化粧をしない理由はヘアカラーリングをしない理由にもつながりますね。ヘアカラーリングをした時の周りの反応が気になる「評価懸念」、染めるのが面倒という「心理コスト」、すぐ色が落ちてしまう、染めない時のほうが髪にダメージがない「効果のなさ」。このような懸念を1つ1つ払しょくしていくことができれば、美容室のお客様のヘアカラー比率の向上につながるかも知れませんね。
参考文献
- 飛田操(1996).化粧の個人的効果と対人的効果に関する実証的研究 Cosmetology,4,145-157.
- 平松・牛田(2004).化粧に関する研究(第3報) 大学生の化粧意識の構造解明と化粧行動の関連性 繊維製品消費科学,45, 837-846.
- 石田香里(1993).現象学から見た化粧 資生堂ビューティーサイエンス研究所(編) 化粧心理学(pp.281-289) フレグランスジャーナル社
- 村澤博人(2001).装いと変身の化粧 大坊郁夫(編)・高木修(監修) 化粧行動の社会心理学(pp.64-73) 北大路書房.
文責
中川登紀子
※この内容は英語で発表された文献から得た情報を含んでいます。日本語と英語のニュアンスが異なる可能性もありますので、詳細は参考文献等をご確認下さい。